大島智衣の「oh! しまった!!」

しまったあれこれ随想録

〈56〉財布よりも落としてはいけないもの

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コンビニで特製豚まん(180円)を買ってきた。

職場で食べようとして、「そのままでいけなくもないけど、そうはいっても熱々が良いよねぇ?」と包み紙ごとチンをして、さぁと引っぱり出した。すると、包み紙の開いた口から勢いよくコロンッと肉まんがカーペットに転がった。

「ああ!!!」

すぐに拾い上げたが、3秒ルールとかそういう救済の概念などまったく通用しないほど情け容赦なくゴミが付着してしまっていた。カーペットがこんなに汚れていたとは。

「あぁほんと……ほんとあぁ……」としばし放心する。

“中華まん 本日全品10円引き!”

そんな見逃せない店頭ポスターに引き寄せられ、「どうせなら高いのいっちゃう?」とほんの贅沢ごころで買い求めた税抜き180円の特製豚まん。
10円引かれて170円に消費税8%掛かって183円のところからポイント還元6%の約11円ほど引かれて多分172円くらいの特製豚まん。

思い切りゴミが付着した下の皮だけ剥いで食べるかなど一瞬よぎったが、「そうはいっても一回転はしたよなぁ……紙を剥がしてチンしたから水気を存分に帯びた裏側にハッキリとゴミが付いたけど、表面だってファーストアタックでカーペットにそれなりに打ち付けられたよなぁ……やっぱダメだ」と諦めて泣く泣くゴミ箱へと放った。

こんなことってば。

満たされぬ小腹。失っただけの172円(概算)。

そしてその数分後、思い返してみてもやはり“180円の特製豚まん”はそう簡単に諦めがつくものではなく、「ねぇ。じゃぁ全部の皮を剥いで中の餡だけ食べればいいんじゃない!?」とひらめき、「だって肉まんの中の肉ってなんかハンバーグみたいに固まってたりするじゃん?」とゴミ箱へと駆け寄った。

いざ、とゴミ箱の蓋を開けるとむわっとした。レンジでチンした肉まんの熱が予想以上にこもっていたのだった(肉まんカイロ……)。手を伸ばして包み紙ごと肉まんを拾う。汚れた皮を無心に剥いた。と、

……あれ?

ハンバーグ餡タイプじゃなかった。ほろほろと崩れる系の餡だった。

……だめじゃねーか。
こりゃもうお手上げじゃねーかよう!

そうして、私はもう一度、その無駄にバラバラになった肉まんを丁寧に紙に包んで生温かいゴミ箱へ放った。

バイバイ、肉まん。いや、特・製・豚・まん(およそ172円)。

 

最善は尽くしたと思う。
I did my best for Special buta-man, right ?

この世には、落とすと台無しになるものがある。
日本では財布を落としても戻ってくることがあるが、肉まんは戻ってはこない。汚いカーペットの上に落としてしまったなら決して。

だから、二度と悔しい思いをしたくなければそれは……

 

気をつけるしか、ない!!