大島智衣の「oh! しまった!!」

しまったあれこれ随想録

〈53〉彼と私の最短距離

ついにこの日を、迎えてしまった。 ショックというか、それでも「おめでとう」というか。「これまでありがとう」というべきか……。 今の職場に移ってからのここ一年半。 朝の出勤時に、大好きな歌手に似た男性と駅の近くですれ違うのを、私は楽しみにしていた…

〈32〉じゃがいもみたい

「ヤー! 何コレー!!」という声が職場に響いたのでビクッとしてそちらを見やると、枯れ葉の上に乗っかった何かがそろーりと運び出されようとしていた。 「じゃがいも? 腐ったじゃがいもじゃない?」 「見た目、そうですよね? でも違うんです……メッチャ軽…

〈21〉寿司の乗る木

ある朝、公園の入口の大きな木に貼り紙が巻き付けられていた。 《植替えのお知らせ》 この木は育ちが悪く、経過観察を続けてきましたが、 回復の見込みがないため植え替えます。 なんたるもの哀しさ……! 毎朝、この公園の木のそばを横切って、職場へと向かっ…

〈10〉大晦日を裏切る者は、大晦日に泣く

一年365日のうちで大晦日が一番好きだ。つい数日前にまた過ぎ去ってしまったのが惜しまれる。 台所でおせち料理を仕込む母を横目に、ぬくぬくのリビングでソファに寝転がり紅白を流し観しながら、時たま筑前煮を盗み食いしに行ったりする。父が隣の自室で同…