大島智衣の「oh! しまった!!」

しまったあれこれ随想録

〈26〉SNSの弁当写真=誰かの旦那さま

日々SNSにアップされる誰かの手作り弁当写真が目に入ると、性根に難ありの私はモヤっとする。「また弁当か!」とイラっとしさえする。なぜなのだろう? そこへ天使のおーしま、ポッと現れて、 天使のおーしま いいじゃないの、お弁当。微笑ましいじゃない。…

〈25〉傘がないわけじゃない

男の人と歩いていて雨が降ってくると「まいったなぁ」と思ってしまう。 内心でドキドキしているのだ。その人と“相合傘”になるのを。「恋でも始まるんじゃないか」と勝手に。 何も迷うことはない。「どうぞ」と傘を差し出せばいい。 だけど、「そんな美人さん…

〈24〉一旦、持ち帰らせてください!

「一旦、持ち帰らせてください!」 医師から手術を薦められ、ひよった私の口から出た言葉がこれだった。 我ながらなんてさらりと便利な言い回しが口をついて出てきたのだろう。 貧血改善の為に一泊二日で帰宅できるという簡単な手術だというが、全身麻酔をす…

〈23〉ひじの皮が厚い女になりたい

ある日、ひじをつくと「痛っ!」となったので袖をまくって見てみると、 「なんだこれは……?」 両ひじとも擦り剥けた感じに赤くなっていた。 「あ、もしかして。いや、まさか!?」 思い当たることが一つだけあった。 その前夜、ひさしぶりにお気に入りの男性…

〈22〉性根がスポンジ・ラブ

気づくと、それまで仲の良かった人に、心の扉をガッシャン閉じられ完全に無視されていることがある。一人や二人じゃない。きっと、私の言動の何かがその人たちの中で「ナシ!」ってことになったのだと思う。 その度に、結構落ち込む。 それから何年も経った…

〈21〉寿司の乗る木

ある朝、公園の入口の大きな木に貼り紙が巻き付けられていた。 《植替えのお知らせ》 この木は育ちが悪く、経過観察を続けてきましたが、 回復の見込みがないため植え替えます。 なんたるもの哀しさ……! 毎朝、この公園の木のそばを横切って、職場へと向かっ…

〈20〉手を、ふる。

この先に消防署がある。 朝、出勤しがけに消防隊員がずらっと整列し朝礼をしているのを見るのが好きだ。 消防署の周りをランニングしている隊員たちに遭遇するのも好きだ。電車のダイヤが乱れてるけど、「本日に限り始発で運行します」とタイミングよく始発…

〈19〉エントランスまで行った。

始発待ちのカラオケボックスで、ザ・イエローモンキーの熱いエモ曲『球根』を歌いながらホント、明け方にひとりでなにやってるんだろうと思った。 私なんかの弱っちい声帯じゃ、圧倒的なボーカル吉井和哉の声量の10分の1も出やしないし、エモくもないし、そ…

〈18〉天下分け目のソファ

日曜日、オバーチャンが「大学の合格祝いを買ってあげる」と言うので近所のニトリへ二人で出掛けた。 「あんたは大学に行ったらたくさん本や参考書を読むだろうから」 と、一人掛けのソファを見て回って、 「これがいいじゃない。座ってみなさい、ほら。あら…

〈17〉鉄の女じゃない、姉だもの。

先日、部屋でくつろいでいたら、あっという間に動悸がひどく襲ってきた。それがあまりにも強くけたたましく早鐘を打つものだから、あらら、このまま死んでしまったりするのかしら? と己の最期を想像し、実家暮らし独身女子の脳裏に浮かんできたのは、 「こ…

〈16〉バレンタインの脇役

中学でも高校でも、部活の部長だった。中学ではソフトボール部の、高校では演劇部の。 そんな部活動バリバリの部長女子だった私は、バレンタインデーは、放課後に意中の男子にチョコを渡し悪びれもせずに部活に遅れてやって来る部員女子たちを、「もう〜遅い…

〈15〉いつか、言うつもりでいる

中学生の時だったか、宮沢りえが突然ヌード写真集を出してビックリした。 真木蔵人と西田ひかるとかとドラマに出てて小室哲哉の歌を歌ってたのに、ヌードって! と。 当時は、「ヘアヌード」の価値や意味が分からなかった。だから、そんな女子中学生が宮沢り…

〈14〉鎌倉なんかで泣いた日

よく曇ったキンと寒い日曜日、カタヨリ荘の皆んなで鎌倉へと出掛けた。 「鎌倉はほぼ初めて」 という優恵さんは、誰が見てもウキウキのはしゃいだご様子。 長谷駅のホームでよくわからないメダルの自販機を見つけ、即断で硬貨200円を投入。足りない小銭を(…

〈13〉『セブンルール』に出たかった人生

無駄によく思いを巡らしたものだ。 『笑っていいとも!』のテレフォンショッキングに出たら、次に誰を紹介しよう?『SMAP×SMAP』の「ビストロスマップ」に出たら何をオーダーする? やっぱりひき肉料理?「食わず嫌い王決定戦」だったら、嫌いなものはネギと…

〈12〉妖怪 “寝テル間ニ靴下脱ガシ”

「目に見えないものは存在しない」というけれど、唯一いるんじゃないか?と思うのは妖怪“寝テル間ニ靴下脱ガシ”だ。 絶対に気づかれない流れるような優しい手つきで、人が寝てる間にそっと靴下を脱がす妖怪である(想像)。 前世にて、就寝中の靴下が原因で…

〈11〉神様、あと59秒だけ

日本のバスはやさしい。手厚く、丁寧に、私たちを目的地まで送り届けてくれる。それがどれほどやさしいかを、私は韓国のバスに乗って初めて知った。 韓国の街なかのバスは荒い。とにかく、運転手が急いでいる。ぼやぼやしていると停まってもくれない。(時刻…

〈10〉大晦日を裏切る者は、大晦日に泣く

一年365日のうちで大晦日が一番好きだ。つい数日前にまた過ぎ去ってしまったのが惜しまれる。 台所でおせち料理を仕込む母を横目に、ぬくぬくのリビングでソファに寝転がり紅白を流し観しながら、時たま筑前煮を盗み食いしに行ったりする。父が隣の自室で同…

〈9〉感受性の産みの親

母に笛で呼ばれる生活が突如スタートした。 毎年クリスマスの時期になると、母から「今年はいついつどこどこで歌うから来てね」とクリスマスの聖歌隊として彼女が参加する屋外ミニコンサートのお誘いを受ける。幸か不幸か、ここもう毎年のクリスマスには予定…

〈8〉愛する誰かと食事しろ?

駅前の一風堂でひとり、思いのたけ豚骨ラーメンを食べ、ふぅ〜満足満足♪ とお店を出たところで知り合いの男性とバッタリ鉢合わせてしまった。 「おーしまさん、ひさしぶりー! 何してんの?」 何の気なしにそう訊かれ、思わず「えっ」と気恥ずかしくなった。…

〈7〉やさしさライセンスぅ

天童よしみ似の銀座のママのお店でアルバイトをしていた、20代のある頃。 ほぼ同時期に入った年下のMちゃんは、群馬県は桐生市出身のきっぷの良い“からっ風”女子で、いわゆる元ヤンだった。 銀座の前は赤羽のお店で長い間働いていたらしく、年季の入った酒ヤ…

〈6〉非モテの星の下

また、言われてしまった。気取らない街の、気取らない立ち呑み屋で、気取らぬじぶんのままでいられる友人女性たちと、楽しく飲んでいたはずだった。 ひとりのお姐様に真っ正面でロックオンされ、こう言われたのである。「おーしまさん、貴女は綺麗だよ。でも…

〈5〉わきの下って、もはや陰部なのでは。

わきの下って、もはや陰部なのではないだろうか。 わきの下の処理をする必要がなくなって久しい。永久脱毛したわけではない。もっぱら昨今、そこは自然にまかせた状態になっている。 もともと、体毛は薄い方で、MAX状態でも見た目やや濃いめのうぶ毛程度。体…

〈4〉パンダの“りんちゃん”

上野動物園のシャンシャンよりも、遥かに人びとを惹きつけてやまないパンダが横浜中華街にいる。 中華街にはお気に入りのカフェがあって、よく行くのだけれど。 1階が中華雑貨屋さんで、小物入れとか中国茶とか、アクセサリーなんかを売っている。そしてその…

〈3〉落ち込んだ日にはバスのおりますボタンを押して

落ち込むことがあった日は、帰りにバスの「おりますボタン」を押す。 ゆっくり、しっかり。ぎゅーっと、確かに。 指先に全神経を集中させて。その感覚をいくらも取りこぼさずに感じたいから。 「とまります」点灯した文字と、運転手さんの「次停止しまーす」…

〈2〉むかしむかしあるところに馬鈴薯姫

デスクで食事をしている人を見ると「よく人前で食べられるなぁ」と思う。 私にはできない。 だって一人で食べるのって、“一人でする”のと……同じじゃない? と思ってしまう。 お店とか休憩スペースで食べるならいい。だけど、食空間ではないオフィスで、デス…

〈1〉40歳になった。誰からも祝われなかった。

先日40歳になった。誰からも祝われなかった。見事に、ものの見事に誰からも。 その日一日、同居の家族からさえも、「おめでとう」のひと言も掛けてもらえなかった。自発的には。 それが、この40年間で私が得たもの──そう、かけがえのない“自由”を手に入れた…