大島智衣の「oh! しまった!!」

しまったあれこれ随想録

〈27〉「フォ〜!!」と叫んだ日

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興奮冷めやらない。思わず「フォ〜!!」と叫んでしまった。

ゴールデンウィーク真っ只中の今、私は両親の旅の付き添いで福島県スパリゾートハワイアンズに来ている。 2泊3日の旅程で、一日目は南会津の大内宿へ。
そして二日目の今日、ハワイアンズへとやって来た。 正直、昨日の昼食を食べ終わった時点で「もう帰りたい……」となっていた。まだ初日だというのに。

やっぱり、どうしたって我が家が一番落ち着く。 じぶんのペースを乱されることに耐性のない私は、家を出た途端にいつも、もう帰りたくなってしまう。何なら朝起きた途端にもう寝たい。日に何度も出先で「はー。早く家帰ってベッドに横になりたい」と思っている。それがたとえ、楽しく過ごしている日中にあっても。楽しさへの持久力もないのである。

そんなヤツが旅なんて。けれどこれには理由があって、昨年末にケガをしリハビリ中の母の補助として、また夫婦の間を持たせるクッション的な役割として、そして親孝行のつもりで、付いて行くことにしたのだった。親のお金で、なんだけどね。お恥ずかしい。

ただ付き添っていればいいよね、と高を括っていた。 足は父の運転する車だしラクチン、と楽観していた。

……ら、違った。

初日。朝6時出発という眠気まなこからスタートして、高速道路を爆走する父の助手席で大変肝を冷やし、あまりよく知らない初めて土地に“場所見知り”し“人酔い”し。気持ちいいはずの温泉では、心臓に負担をかけ過ぎてやしないだろうかと極度に不安になり。まだ二日もあると途方に暮れ。夜9時に早々と就寝した両親の隣で、眠れないからと鞄からランダムに手に取った本は穂村弘さんの『もうおうちへかえりましょう』で、ホントもう帰りたかった。

そして二日目。県内をゆっくりと横断しながら、名所を巡ったり道の駅などに寄り道したりとご機嫌に過ごせていたのだが、昼過ぎに本日の目的地であり宿泊先のスパリゾートハワイアンズに到着するなり「もう帰りたい」が沸点に。

東北地方における唐突な南国ムード、「アロハ〜」とひと昔前の日本なら「後で電話するね〜」の指ポーズで話しかけてくれるおもてなし力の高いスタッフさんたち、塩素の匂いでムッとする温水プールに浮かぶ、老ッ若ッ男ッ女ッ。

ホントもう、帰りたい。

私なんぞには、リゾートとかスパとか水着とかハイビスカスとかは、無縁だ。もう全く、じっとりと湿地帯で、たっぷりと重ね着をして、山野草をしゃがみ込んで眺めていたい。それなのに、こんなハロハロな場所になんで迷い込んでしまったのだろう。館内お過ごし用ムームー(ハワイチックなワンピース)まで着せられて。

それでも、旅を楽しむ両親の気持ちを台無しにしてはいけない、と残りの旅の意識を夕飯のバイキングに絞ってなんとか過ごした。

そうして、いろんな気持ちを何もかも飲み込むかのように、おいしくバイキングをたらふく食べたのち、一家はハワイアンズ名物「フラガールショー」を観にイベント広場へと向かった。ちなみに、両親はここハワイアンズは4度目の来訪だという(何故?)。その両親が一番楽しみにしているのがこのショー。そりゃ、私も映画『フラガール』は観たことあるし、テレビでの取材も観たこともあるし、素敵だろうことは想像していた。それが、ショーがスタートしてすぐに、

メッチャカッコいい! メッチャ女神! と前のめりに湧き立ち、しまいには「フォ〜!!」と叫んでいたのだった。心から。ムームーで。

特に、ファイヤーダンスを乱舞する男性ダンサー達には、その瞬間だけは私も彼らに恋するサモアの少女だった。
「でも実際、好きな男の子が膝下に木の葉っぱワシャワシャ飾り付けて踊っていたらどうだろう? こちらがちょっと恥ずかしくなってしまいやしないか?」などと途中邪念が浮かんだりもしたけれど、「それが何!?  これがアノ“絶対領域”でしょう?」と軽々凌駕するファイヤー萌え! 恥ずかしがるだけ損ってものである。 こりゃ、ファンクラブとかあってもおかしくないなと思ったら、ショーの終わりに特製らしき内輪をもってダンサーに駆け寄る女性たちが目に入り、やはり人気はなるほど、と納得した。私も入りたいもの、ファンクラブ。

もう、さ。素晴らしいよね、ハワイって。最高だよね、スパ。 ちょーマハロ(ありがとう)です、スパリゾートハワイアンズさん!!!

……と、あれよという間に二日目の旅を終えて、寝息を立てている両親の横でこれを記している。ムームー姿で。(電気点けてて申し訳ない。)

旅って素敵だ。明日の最終日、両親に今回の旅路を感謝しながら安全に帰途に就きたいと思う。ホ・オポノポノ!